Slackでのスレッド整理や返信作成、ファイル検索などは手作業が多く、時間を取られる場面が少なくありません。 2025年10月、OpenAIはこれらの課題を解消するため、SlackとChatGPTを統合する2つの公式連携機能「 ChatGPT app for Slack」と「 ChatGPT connector for Slack」を公開しました。この連携により、Slack上でのリアルタイムなサポートと、ChatGPT側からSlack情報を参照・分析する活用の両方が可能になりました。両機能はChatGPTのPlus/Pro/Business/Enterprise/Eduプランで利用でき、アプリ利用には有料Slackアカウントが必要です。
本記事では、この新しい連携機能の構成・特徴・導入手順・運用上の注意点を、実務に即して整理します。
目次
- 新たに追加された2つの公式連携
- 利用パターンと使い分け
- 機能の全体像
- 共通機能
- ChatGPT app for Slack
- ChatGPT connector for Slack
- 対応プランと利用条件
- 導入手順のポイント
- 業務への活用例
- 運用設計とガバナンス
- よくある誤解と注意点
- まとめ
新たに追加された2つの公式連携
まず公式発表で示された変更点を押さえると、設計や運用の検討が進めやすくなります。
- ChatGPT app for Slack
Slackの専用サイドバーでChatGPTと1対1の対話を行い、要約・返信下書き・メッセージ/ファイル検索を実行。Slackで開始した会話はChatGPT側のサイドバーにも表示されます。
- ChatGPT connector for Slack
ChatGPT(Web/モバイル)側でSlackの文脈を安全に参照。Chat、Deep Research、Agent Modeで利用できます。
これらは併用可能で、アプリをインストールする場合でも、アカウント側でコネクタを有効化しておくことが必要です。
利用パターンと使い分け
導入判断は「どこで作業するか(Slack内か、ChatGPT側か)」を軸にすると明瞭です。
| 連携 | 利用場所 | 主な用途 | 対応モード | 検索方式 | 導入上の前提 |
|---|---|---|---|---|---|
| ChatGPT app for Slack | Slackの専用サイドバー | スレッド要約、返信文下書き、Slack内検索 | アプリ内のみ(Deep Research/Agent Modeは非対応) | すべてでキーワード、Business+/Enterprise+のAI有効時はセマンティック | 有料Slack+ChatGPT(Plus/Pro/Business/Enterprise/Edu)。アプリ利用にはコネクタ有効化が必要。 |
| ChatGPT connector for Slack | ChatGPT(Web/モバイル) | Slackのメッセージ・DM・チャンネルの参照と要約 | Chat/Deep Research/Agent Mode | 同上 | ChatGPT(Plus/Pro/Business/Enterprise/Edu)。1アカウント=同時に1ワークスペース接続。 |
機能の全体像
SlackとChatGPTの統合には、「ChatGPT app for Slack」と「ChatGPT connector for Slack」の2系統があります。それぞれの役割は明確に異なり、Slack上の即時対応を担うのがアプリ、ChatGPT側でSlack情報を参照・分析するのがコネクタです。
共通機能と個別機能を分けて整理すると次のようになります。
共通機能
両者に共通するのは、Slackのデータを安全に取り込み、権限範囲内で生産性を高める点です。
- 権限ベースの検索
閲覧可能なチャンネルやDM、ファイルのみが検索対象となり、社内ポリシーを尊重。
- メッセージ・ファイル検索
すべてのプランでキーワード検索を利用可能。Slack Business+/Enterprise+でAIを有効化している場合はセマンティック検索も対応。
- スレッド要約
長文スレッドを要点とアクション項目に整理し、迅速に内容を把握。
- データの安全な連携
OAuth認可を通じてワークスペースを接続し、SlackのコンテキストをChatGPTに安全に引き渡す設計。
これらはアプリ/コネクタのどちらを使っても共通して体験できます。
ChatGPT app for Slack
Slack内で完結する作業を効率化するための機能を備えています。
- 専用サイドバーでの1対1チャット
SlackのUI内でChatGPTと直接会話し、質問や指示、下書きを即座に実行。
- 返信文の下書き生成
トーンや内容を踏まえた返信案をその場で作成。
- スレッド要約の即時表示
チャンネル上で長い会話を要約し、タスク化やフォローアップを容易に。
- Slackとの往復同期
Slackで開始したチャットはChatGPT側のサイドバーにも表示され、Web/モバイルから継続可能。
アプリはSlackの操作範囲内で即時的に情報整理・返信生成を行いたい場合に最適です。
ChatGPT connector for Slack
ChatGPT側からSlackの情報を参照・検索するための仕組みです。
- Slack文脈の自動参照
ChatGPTのChat/Deep Research/Agent ModeでSlack情報を呼び出し、回答に反映。
- マルチモード対応
Agent Modeでタスク分解、Deep Researchで過去スレッドを横断調査など、ChatGPT機能と統合。
- 1アカウント1ワークスペース接続
明確なアクセス管理のもとで安全に運用。
- Business既定有効化/Enterprise管理可
組織ポリシーに沿った利用制御が可能。
コネクタはSlack情報をChatGPTワークフローに組み込みたい、分析や資料作成で横断的に活用したい場合に有効です。
このように、
-
Slack内のやり取りを効率化するなら ChatGPT app for Slack
-
ChatGPTでSlackの文脈を参照しながら調査・生成を行うなら ChatGPT connector for Slack
という住み分けになります。両者を併用することで、Slack業務とChatGPTワークフローを途切れなく接続できます。
対応プランと利用条件
導入可否は「OpenAI側のプラン」「Slack側の条件」「地域制限」に左右されます。
| 観点 | 要点 |
|---|---|
| OpenAI側の対象 | Plus/Pro/Business/Enterprise/Eduでアプリ・コネクタの利用が可能。Businessではコネクタが既定で有効。 |
| Slack側の要件 | アプリの利用には有料Slackが必要。ワークスペース設定により管理者承認が必要な場合あり。 |
| 検索方式 | 全プランでキーワード検索。Slack Business+/Enterprise+でAIを有効化している場合、セマンティック検索。 |
| 地域制限 | Plus/ProのEEA・GB・CHではコネクタが利用不可(アプリもコネクタ依存のため影響)。Business/Enterpriseは影響なし。 |
| 接続の上限 | コネクタは1アカウントにつき同時に1ワークスペースまで接続可。 |
条件面は事前確認が重要で、特に地域制限とワークスペース承認フローは導入のボトルネックになりやすいポイントです。
導入手順のポイント
評価導入から本番展開までの流れは、運用権限の設計と技術設定を並行して進めるのが効率的です。
まずChatGPTの「設定> アプリとコネクター」でSlackコネクタを有効化し(Businessは既定で有効、Enterprise/Eduは管理者による有効化とRBAC設定が必要)、利用対象のユーザー/グループを決めます。
次にSlackのワークスペースにChatGPTアプリが導入済みかを「Apps in Slack」で確認します。未導入なら、ChatGPT側の インストールリンク から認可フローへ進み、ワークスペース設定に応じて承認を得ます。
最後に各ユーザーはChatGPTのコネクタ設定からSlackを「Connect」し、OAuthで対象ワークスペースに接続します。接続完了後、Slackのアプリ一覧からChatGPTを開けば専用サイドバーで対話・要約・検索が利用でき、ChatGPT側からもSlackの情報参照が可能になります。
業務への活用例
導入直後に効果が出やすい場面を、Slack内完結とChatGPT側活用に分けて整理します。
- Slack内で即時対応
スレッドの要点整理とアクション抽出、返信案の生成、該当チャンネルの範囲指定検索。
- ChatGPT側での横断活用
Deep Researchで関連チャンネルや過去DMを含む俯瞰要約、Agent Modeと組み合わせたタスク化、他コネクタ(例:DriveやSharePoint等)と併用した資料作成。
最初は影響範囲が小さいチャンネルで運用し、検索品質や要約精度の社内合意を得ながら適用範囲を広げると安定します。
運用設計とガバナンス
設定と社内ルールを先に固めることで、問い合わせや再設定の手戻りを抑えられます。
- 権限の尊重
検索対象はSlackで自分に見える範囲のみ。過剰な権限付与を避けます。
- 保持・データレジデンシー
Slackは第三者サービス。保持・居住・プライバシーはSlack側ポリシーに従います。
- コンプライアンスAPI
会話はコンプライアンスAPIで参照可能(Enterprise/Edu等の要件に依存)。監査要件に合わせたアクセス設計を行います。
- APIレートと負荷
大量利用はSlackのユーザー単位API上限に達する可能性があります。
- 接続ポリシー
コネクタは同時に1ワークスペースまで。切替時は切断のうえ再接続が必要です。
この5点を導入タスクに含めておくと、運用開始後の制御が容易になります。
よくある誤解と注意点
実運用でつまずきやすい仕様差や制約を事前に共有しておくと、ヘルプデスク対応を減らすことができます。たとえば、 アプリではDeep ResearchやAgent Mode、モデル切替は利用できません。チャンネルの指定方法も異なり、アプリ内では「#タグ」ではなくプレーンテキストのチャンネル名で指定します。また、アプリからの会話はメモリー設定がONになっていても新規メモリーを書き込みません。 さらに、検索方式にも違いがあり、セマンティック検索はSlack Business+またはEnterprise+でAIを有効化している場合にのみ利用可能で、それ以外の環境ではキーワード検索となります。
こうした仕様をローンチ前に共有し、関係者の期待値を合わせておくことが、スムーズな展開につながります。
まとめ
ChatGPT app for SlackはSlack内での対話・返信・要約を効率化し、ChatGPT connector for SlackはChatGPT側でSlackの情報を参照・分析する仕組みを提供します。 導入にはコネクタの有効化が前提であり、プラン・権限・地域制限の確認が欠かせません。
最初は限定的なチャンネルやチームで検証を行い、検索・要約の精度を確認したうえで展開するのがおすすめです。 ChatGPTとSlackの連携をうまく取り入れることで、情報の整理・共有・判断スピードが大きく向上します。